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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第1章 white eyes


 彼女は思いのまま言葉を紡ぎ出した

「ルクレツィアは……」
「またその話か。聞き飽きた」
「待って。あのねセフィロス。ルクレツィアは私の恋敵なの」
「は?」

何を言い出すのかと、セフィロスは訝しげにシャロンを横目で見た。

「驚いた?」
「あまり聞かされたくない話だな」
「どうして?」
「好いた女の想い人の話など、聞かされたくない」

ため息をついて再び瞼を下ろす。
本当に聞き飽きているというのが伝わってくるほど無関心そうに。

「本当にそれだけ?」
「他に何がある?」
「自分の親の恋の話って、あんまり聞きたくないわよね。大人になると許容できるようになるのだけれど、不思議だわ」
「お前の魂胆はわかった。あの女を母と認めさせたいのだろう」
「生みの親は生みの親。事実は変わらないわ。でもそれだけじゃない。セフィロス、私をお母さんだと思ってくれてもいいのよ」
「はぁ……。そうだな。お前はどうあっても俺を子供扱いするんだな」

手のひらを仰がせ、首を振る。
その人間らしい反応に安堵の笑みをこぼした。

「私には産みの苦しみはわからないけどね。出産は死と隣り合わせというわ。それでもお母さんは産む覚悟を決めるの。きっと、お腹にいるときからずっと、あなたに会いたくて会いたくて、いとしさを募らせていたのね」
「……だったら何故、会いに来ようともしない」
「見ていないの? ルクレツィアの記憶。あなたを産んで間も無く、引き離されたのよ」
「だが、子供のことなど忘れて男に走っただろう。所詮その程度なのさ」

シャロンは眉を下げしゅん、として見せた。
言葉からもセフィロスが拗ねているように聞こえるのに、頑として母を認めようとしないことが悲しく思えた。

「私、ルクレツィアの気持ち、わかる気がする。体は蝕まれ、あなたを失い心も疲弊して。そんな中でもヴィンセントは献身的に彼女を支えたの。だけどずっと守ってくれたその人は突然射殺されたわ。せめてその人のことだけは助けたかった。失うのはもう、たくさんだった……」
「……勝手な女だ」
「勝手でいいのよ。人はまず自分が幸せでいることが大切なの。そうしなきゃ、周りにも不幸の因子が散らばるから。セフィロス、ルクレツィアは今祠にいるわ。ヴィンセントに会っても目覚めないの。本当は、何を待っているのかしら……」

セフィロスは光の海に姿を消した。
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