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ヒトメボレ

第1章 偶然か必然か


彼にハマってからというもの、ここの店舗に毎日と言っていいぐらい通い詰め、お店の人とも顔見知りになってしまうレベルにまで達していた。
まぁ、ここまでハマるとは自分でも思っても見なかったけど…。

早速お目当てのものを購入し、お店の外に出たところで袋の中からちらりと見えるDVDに目を輝かせた。

早く帰って見なくては…!
このイベントの彼、凄く可愛いんだよね!

高ぶる気持ちを抑えつつも、買ったばかりのDVDを大事に鞄の中にしまった。
早く帰ろうと若干早足で歩いていると、


「待って…っ」


後ろから聞こえた声と同時に、腕あたりを掴まれて身体が後ろへと引っ張られた。


「え…?」


驚いたまま振り向けば、帽子にマスクをした明らかに怪しい男の人が、私の腕を掴んだまま立ち尽くしていた。


「あの、何か…?」


道案内にしては他にも人がいるのに、私を引っ張ってまで引き止める必要もない。
かと言って知り合いかと聞かれれば、帽子とマスクで顔が隠れているが、この雰囲気的に違うと思う。
恐る恐る尋ねてみると、少し息の上がってる彼がマスクを下にズラした。


「ここで帽子も取るのはマズイから、声だけで分かるかな…?」


帽子の隙間から見えた鋭い目つきに聞き覚えのある声。
見上げた先にいるのは間違いなく、イベントや画面越しに何度も見てきた愛しい人。


「う、内山…昂輝…さん…?」

「うん、内山です」


恐る恐る尋ねてみると意外にもあっさりと返ってきた答えに、私の頭はパニック状態に陥った。


「え、な、え、え?」


頭が真っ白で何も考えられない。
ただ、分かるのは目の前に自分の好きな人がいるという事実。
混乱している私を見て彼は申し訳なさそうに掴んでいた手を放した。


「あの、ごめん。よくイベントに来てくれてるの知ってたから…」

「い、いえ、私の事覚えててくれてたんですか!」

「…え、あ、うん」


あの大勢いる中で、しかもファン歴も他の人から比べたら浅いのに、そんな私の事を覚えていてくれてた。
その事実が嬉しくって嬉しくって、つい口元が綻ぶ。




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