第2章 おともだち
今日はスタジオで新作アニメの収録日。
小休憩でスタジオ内の休憩室で飲み物を飲んで休んでいると、
「うっちー、なんか今日変」
「え?どこが?」
同じ作品で共演する事になった良平くんが不意にそんなことを言い出した。
「いつも気怠げな感じなのに、待機時間とかもやたら時間気にしてソワソワしてるし。この後なんかあるの?」
隣でパイプイスに寄りかかりながら、目線だけ俺に向けて来る良平くん。
本当、よく見てるなこの人は…。
「…んー、ちょっとね。良平くんには教えないけど」
「なんでだよー!けちっ!」
身を乗り出して俺の肩を揺さぶってきたのと同時に、休憩室のドアが軽いノックの後にガチャリと開いた。
「すみませーん!内山さん願いしまーす!」
「あ、はい」
呼びに来てくれたスタッフさんに返事を返し、俺は不貞腐れてる良平くんをそのままにして先に休憩室を後にした。
「…やっぱり変」
扉が閉まる直前、良平くんのそんな呟きも俺の耳には届かなかった。
もうすぐ仕事も終わって、カフェで働く君に会いに行ける。
あの日から、数日経ってしまったし、今日出勤してるかもわからないのに、何故か君に会える気がして仕方がないんだ。
ー・・・
「いらっしゃいませ!」
一番混み合うランチタイムも抜け、店内はようやく落ち着き始めたところ。
それでも、途切れ途切れではあるが、口コミで評価が高かいオーナーの手作りケーキを目当てにお客さんはやってくる。
「2名様ご案内です!」
私を遠目から見守っている人影に気付くこともなく、私は女性二人組をテーブル席まで案内していた。
「なんかさん、今日やけに張り切ってますね」
「んー、この間買ったDVDの効果かなー?」
「DVD?」
「いや、こっちの話だから気にしないで」
なんて、オーナーとバイトの子の遣り取りされてるなんて知る由もなく、私の頭は仕事とは関係ないことでいっぱいだった。