第1章 *一ノ章*
それから何度かメールのやりとりをしていく内に、もう一度会う約束が出来た。
大分忙しいみたいだけど、今度の日曜はオフらしい。
そこで二人で私達が育った孤児院に行く事にした。
音也はそれなりに通ってるみたいだけど、私はしばらく振り。
皆、元気かなぁとワクワクして迎えた日曜日――。
「お~と君!」
待ち合わせ場所には既に音也が居た。
近くで買ってきた冷たい飲み物を首筋に当てると慌てたように振り向く。
「な、なぁちゃんか……脅かさないでよ」
「ごめんごめん」
「全然悪いと思ってないでしょ」
「え~?そんな事ないよ~?」
わざとおどけてみせると、少しむくれた顔になってすぐに噴出した。
「やっぱりなぁちゃんは変わらないね」
「そうかな?」
「うん」
私からしたら音也の方が変わってないように見える。
私が変わっていないとすれば、音也の私に対する認識も変わっていないのだろうか。
「なぁちゃん?」
ハッと我に返った私は心配そうに顔を覗きこむ音也に
『なんでもない』
と笑って見せた。
「行こう」
その場を紛らわせるため私は足早に孤児院へと向かった――。