第1章 *一ノ章*
孤児院に着くと我先にと音也の周りに子供達が群がった。
音也も楽しそうに子供達に対応する。
「おと兄ぃ!あのね――」
「おと兄ぃ!おれ達と鬼ごっこしようぜ!」
「おと兄ぃ!」
左右前後から絶え間なく呼ばれる音也はちょっと困ったように
「なぁちゃん!ちょ、来て!」
手招きをする。
微笑ましくもあるが、彼の仕事はアイドル。
あまり無理をさせるわけにもいかない。
「じゃあおと兄ぃと外で遊ぶ子と、なぁちゃんとお部屋で遊びたい子!」
幸い、半分くらいに分かれてそれぞれによっていった。
大体は部屋が女の子、外が男の子だがどちらも楽しそうだ。
「なぁちゃん!ここってどうするの?」
「ここ?ここはね――」
「なぁちゃん!なんか、おかしなことになっちゃった」
「どれ?みせて」
忙しくも凄く楽しくて、嬉しかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
帰り際には音也はへとへとだったけど、満足そうな顔だった。
「なぁちゃん、もう帰っちゃうの?」
「うん。また来るから、ね?」
「約束だよ!」
「おと兄ぃも来るよな!」
「もちろん!」
「なぁちゃんも次はおれ達とも遊ぼうぜ!」
「わかった。その代わり良い子で居るんだよ?」
名残惜しそうに次に会う約束をして孤児院を出た。
その後、音也ともすぐに別れた。
きっとこれも運命――。