第1章 *一ノ章*
私達はお互い、懐かしくて次々と自分達の話しをしていた。
仕事、友達、先生や先輩など...
音也の周りの人は皆、いい人ばかりのようで安心した。
同時にちょっと寂しかったけど……。
「夏海は何の仕事をしてるの?」
「ゲームクリエイター。ほら、そこに見える会社」
自分の職場を指差すと彼は感心したように『へぇ』と漏らした。
今の仕事は好きだし、何より楽しい。
嬉々として自分の話をする私を音也は楽しそうに聞いてくれた。
「夏海って本当にその仕事が好きなんだね」
「もちろん!おと君も今の仕事好きでしょ?」
「うん!俺の歌で皆が笑ってくれるしね!」
やっぱり何も変わらない。
音也は昔から皆の笑顔が好きだった。
だから、きっと今の仕事に誇りを持っているだろう。
「あ!もうこんな時間だ!ごめん!俺、もう行かなきゃ!」
「そっか。ごめんね、長々とつき合わせちゃって」
「ううん。俺も楽しかったし!あ、これ」
去り際に差し出したのは小さなメモ。
そこに書かれていたのは、メールアドレスと思われるもの。
「暇なときにメールして!じゃあね!」
慌ただしく去っていく背中にそっと『ありがとう』とお礼を述べた。