第2章 *二ノ章*
私って本当にバカだなぁ……。
音也が一人じゃなくなったって嬉しい事のはずなのに、嫌だって思うなんてね。
いつからこんな醜くなったんだろう……?
「なぁちゃん?」
「ごめん、私帰るね」
「え?ちょ、なぁちゃん!?」
音也がいくら呼ぼうとも私は振り向く気はなかった。
きっと今行くと皆に迷惑をかける事になる。
音也を、困らせてしまう。
そんな事を考えていたから、周りを全く見ていなかった。
ドンッと誰かとぶつかってしまった。
「……すみません」
一言詫びを入れて通り過ぎようとしたらパシッと腕をつかまれた。
反射的に腕をふりほどこうとしたが、出来なかった。
「……離してください」
俯いたままそういうと相手は軽くため息をこぼした。
「死にたいのなら離すけど」
その言葉を声に私は二度驚かされた。
『死にたいのなら』という言葉は比喩でもなくただの事実だった。
目の前には物凄い勢いで行き交う車。
そしてその声の持ち主は――
「……美風、さん?」
呆れたような顔で私を見ていたのは紛れもない美風さんだった。
一体彼が何故ここにいるのか、何をしていたのかまで問う気はない。
ただ一つ、確実なのは美風さんが私を助けてくれた事。