第2章 *二ノ章*
美風さんは呆れた顔で『こっち』と手を引いた。
ぼうっとしていて上手く状況をつかめていない私を人にぶつからない
ところへ連れて行ってくれた。
「……何やってるの?君は」
呆れた目の中に僅かに心配そうな表情が見え隠れする。
「……なんでもないです。ご心配掛けてすみませんでした。」
「なんでもないって顔じゃないでしょ」
「……平気です!ちょっと寝不足なだけですから!」
あえて笑ってみせた。
もちろん、美風さんがそんなので誤魔化せるわけもなく……。
「君がどんな嘘をつくのも勝手だけどオトヤに恨まれるのは嫌だから送ってく」
『オトヤ』の名前に少し肩を震わせてしまう。
そんな些細な動作すらも見逃してはくれなかった。
「オトヤに関して何かあったの?」
「な、んにもないです」
明らかに挙動不審だっただろう。
言葉はつっかえるし一度も美風さんの目を見ない。
「君って本当に嘘つくの下手だね」
「……大丈夫です。私が勝手に落ち込んだだけですし」
いくらなんでも誤魔化しきれないと分かったから私に言えることは心配
掛けないようにするだけだった。