第9章 episode4 カルマの時間 2時間目
業の回想を思い出す。
業が先生不信になったのは、大野のせいだ。
喧嘩っ早い業だけど、決して無益なことをしているわけじゃない。
そこには、正義が存在していた。
弱いものを助けるための暴力。
しかし、去年虐められていたE組の先輩を助けA組の先輩を殴りまくったことで大野からE組行き宣告をされた。
「赤羽が正しい限り味方だ。」
という依怙贔屓染みた言葉あっけなく破られ、あまつさえ、俺の評価落としやがって・・・・・・と業本人の前で言った神経を疑う。
正しいことをしたはずなのに、E組の奴をかばって、A組の先輩が受験できなくなったらどうするんだ。
って大人なんだから間違ってることを正さなきゃいけない立場でそれはないと思うような発言をした。
それによって、業の中で先生という者が死んだ。
「業くん、大丈夫?」
「あぁ、雪見か。俺に話しかけない方がいいよ。E組行きになったし」
「そんなの関係ないよ。友達がショック受けてるのに、E組だとか関係ない。」
「雪見・・・・・・じゃあ、俺のせいでE組になっても同じこと言える?」
その時の業はいつもの自信に満ちた面影はなかった。
「何度でも言うよ。だって業くんは悪いことしてない。殴りすぎかなとは思ったけど、悪いのは殴られたA組の先輩だもん。」
業の目を見て、手を握ってはっきりとそう伝える。
私の言葉に業は少しうれしそうに笑った。
「はは、なんだか雪見なら、俺と心中してくれそうな気がしてきたよ。」
「そこでなんで心中チョイス!? 死なせる気はないし、死ぬ気もないよ!?」
「わかってるよ。」
ようやくいつもの軽口が戻ってきて、少しは安心したものだ。
人。と言うのは面白いもので、どんなに、表面上取り繕っても体は正直だ。
だから、その時手を握って業が震えているのがわかった。
でも、支えてくれる人がいる。というのは大きな励みになる。
「でも、いつか・・・・・・業が信用できるような先生に出会える気がするな。」
「どうかな?」
「じゃあ、どうしても信用できる先生に出会えなかったら、私を信用してよ。」
「考えとくよ。」
それが停学の少し前。