第8章 episode4 カルマの時間 1時間目
「ひっ」
頭上で割れた瓶というよりは業に怯えるように、頭を守るように本校舎組2人は距離をとる。
そんな怖がるなら、最初から業の逆鱗に触れるようなことしなきゃいいのに。
っていうか、その瓶どうしたの。
「へぇ? 死んでも嫌なんだ?」
まぁ、絶対今の瓶は狙ってたと思うけどね。
「じゃあ、今死ぬ?」
飲み口側の割れた瓶を2人に向ける。
「あ、赤羽!?」
2人は逃げるようにして、その場を去った。
「はは、やるわけないじゃん。ずっといいおもちゃがあるのに、また停学とかなる暇ないし。」
「業くん・・・・・・」
「っでさぁ、渚くん。聞きたいことがあるんだけど。あ、あんりは帰っててもいいよ。」
「なんで私だけハブなのかな?」
「男だけで話したいことってあるじゃん。」
「どーせ殺先生のことでしょ。」
苦笑いで流そうとしたって駄目です。
・・・・・・ん? あれ?
「業。手、ケガしてる。」
「ん? あぁ。コレ? このくらいならほっといても治るって」
「ガラス片で切ってたら血止まらなくなるよ。」
かといって、絆創膏なんて持ち歩いてない。
「あ、僕絆創膏持ってるよ。」
流石は渚。
「でも、このままじゃダメだよね・・・・・・」
(かといって、トイレとかまでついてこないだろうし。しょうがない。不可抗力不可抗力。)
私は自分にそう言い聞かせて、血がにじんでいる業の指を口に運ぶ。
「!?」
「あんり!?」
「だって、消毒しなきゃじゃん。自分でしろって言ってもしないでしょう?」
口に指入れた瞬間にビクッてなったから、染みたのかと思ったけど。
顔が赤いだけだから、恥ずかしかっただけかな?
「そうだけど、それでガラス片が残ってたら、あんりがケガするんだよ。大丈夫?」
「平気平気。大人に戻ればリセットされるし。」
嘘です。
微妙に細かいガラス片残ってたらしくてちょっと切った。
平静を装って渚から受け取った絆創膏を巻く。
「家に帰ってからちゃんと消毒してよ。」
「わかったよ。」
降参。という素振りの業にまだ疑念の目を向けながらも
「あ、ちょっと用事思い出したから2人で帰って。」
「え? あ、ちょっと・・・・・・」
「2人ともまた明日ー」
不自然には見えないように振る舞えた筈。