第7章 episode4 体育の時間
「雪見さん、前原くん前へ」
(ここ磯貝とじゃなかった?)
軽くパニックになるよそりゃ。
こんなシーンなかったよ。
私は渋々前に出る。
「そのナイフを俺に当ててみろ。」
「え、いいんですか? 二人がかりで」
「っていうか、なんで私を選んだのかわからないんですが」
「そのナイフなら、俺たち人間にケガはない。あと雪見さんを選んだのはなんとなくだ。」
なんとなくかい!
「かすりでもすれば、今日の授業は終わりでいい。」
そう言って、烏間先生はネクタイを緩めた。
ふむ。
烏間先生は、私たちが素人でナイフも扱いもまだまだ。だと思っている。
逆にその油断を利用すれば・・・・・・
「えーっと・・・・・・」
「それじゃあ。」
前原と目で合図を取ってから動き始める。
磯貝が特攻したときこっち側に避けるから・・・・・・で、そこを前原が攻撃するから、
「ていっ」
上手く誘導できた。しかし、
(そうだった。受け流される・・・・・・)
「このように、多少の心得があれば素人二人のナイフくらいは俺でも捌け・・・・・・!?(なんだこの。動いたら殺られそうな殺意は!?)」
「くっ」
この後悔しがって、突っ込んだらダメだ。
冷静に・・・・・・そこだ!!
「何!?」
私が放った一撃は烏間先生の頬をかすった。
「す、スゲー雪見の奴。ホントにかすりやがった。」
「驚いた。今回は雪見さんが当てたが、俺に当てられないようではマッハ20の奴に当たる可能性は皆無だろう。見ろ! 今の攻防の間に奴は・・・・・・」
大阪城の砂の城を作り、千利休よろしくコスプレして抹茶まで立てている。
「腹立つわー」
「そう? 殺先生。そのお茶飲みたーい。」
「いいですよ。雪見さん。どうぞ」
「いただきます。」
久々のお抹茶美味しかったです。ってそうじゃないよ。
烏間先生のご高説が始まってしまった。
戻るにも戻りにくいので、このままお茶をいただこう。
「暗殺に必要な基礎の数々。体育の時間で俺が教えさせてもらう。では、今日の授業はここまで」
「スゲー・・・・・・」
「ありがとうございました。」・「ごちそうさまでした。」
「お粗末様です。」
立ち上がると、階段の上に人影が見える。
ついに来てしまった。
私の最推しが。