第3章 真選組生活 1日目
「おはようございます、近藤さん。です。」
午前6時50分少女が近藤の部屋の前にも到着した。
「ちゃん。おはよう。さ、食堂に行こうか。」
「はい。」
近藤の方は起きてすぐなのだろうか。大きなあくびをしながら少女の前をあるいていく。一方少女はその二歩後ろを、緊張しているのだろうか、少し強張った表情でついて行く。
食堂に着くと、近藤は思い出したように後ろを振り向き、少女がキチンとついて来ていることに安堵しながら、
「そんなに緊張しなくていいよ。ここにいるやつらは、顔は怖いかもしんねーが、悪い奴らじゃ無いから。」
「はい。」
「ま、慣れたら大丈夫か。あんまり気負うなよ。」
近藤が安心させるために少女の頭を撫でると、少女は驚いた表情で固まってしまった。
「わ、悪い。いやだったか?」
「…いえ、ただ驚いただけです。ありがとう、ございます。」
「そ、か。じゃ食べようか。」
別に不快だったわけじゃ無いんです。むしろ嬉しかったんです。でも、なんだか…泣きそうになっちゃっただけなんです。
必死に今ある状況を客観的にかつ俯瞰的に見ることによって自身の精神を保っていた。自分の居場所に帰るために。自分の立ち位置を見失わないように。外に外にと神経を向けていたにも関わらず、ほんの少し頭を優しく撫でられてしまったたけなのに、一瞬にして視点が自分に戻ってしまい、少し安定を失ってしまったのである。