第10章 真選組女中生活 X日目 志村新八
どれくらいここにいたのだろうか。あたりは少しずつ変化していき、周りはオレンジ色に囲まれはじめた。
「そろそろ帰りますか?」
「うん、そうだね。送って行くよ。」
「はい、ありがとうございます。」
お礼を述べながら夕日をバックに少女は新八に微笑んだ。ほんの一瞬であったのだが、新八には凄く長い時間のように感じた。そして、その笑顔はとても美しく新八の目には映ったのだった。
可愛い…
新八は頬が赤くなるのを感じたのだが少女から顔を背けることができなかった。見惚れてしまっていたのである。
「新八さん?行かないんですか?」
「え?あ、ああ。そうだね。帰ろうか。」
やばい。さっきの方が近かったのに。さっきなんてむ、胸が当たってたのに、さっきより緊張してる。な、なんでなんだ?
帰路につきながら自分の感情の変化に同様する新八。しかしそのことを少女に伝わってしまうと、一生取り返しのつかないことになると直感的に感じ取った新八は、少女に気づかれないように細心の注意を払いながら寄り添うように屯所へ送ってやった。
そして、屯所に少女を無事に送り終えると少女は再度新八にお礼を述べた。しかし、今度は空虚な無表情であった。
そこから半月、新八は一度も少女を見ることは無かった。