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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第5章 睡蓮




「で、中也は如何思う?」

「……は?」


いつの間にか会話そっちのけで考え込んでいたのだろう。
急に話を振られたが何も分からない。


「だーかーらー、そもそも慣れてるからって恋人でも無い私に下着姿を見られて何とも思わない事が可笑しいんじゃないって話だよ。」


いやいや、待て。
彼奴は今、恋人では無いって言わなかったか?


『其れは何十回と見られてたらそうもなりますって!』

「君には羞恥と云う感情が無いのかい?」

『好きな人の前ではちゃんと恥ずかしいから良いんですよ!放っておいて下さい。』

「其れが分かってると云う事は君の云う想い人はちびっこマフィアだったり?」

『なっ、何を云うんですかっ。』

「愛理顔が赤いよ。全然隠せてない。じゃあ、後は任せるよ。私は忙しいから。今日は恥じらう愛理を見られて最高の一日だよ。」


同時に最低の一日でも或るけれど。
そう呟く太宰の声は誰にも届かず其のまま何処かへ行ってしまった。


「なァ?」

『はっ、はい!?』

「ンなビビんなよ。別に取って食いやしねェ。…太宰の野郎とは付き合ってた訳じゃねェのか?」

『付き合う訳無いじゃないですか!確かに良くお互いの部屋を行き来はしてますけど…』

「身体だけの関係ってことか?」

『はぁ!?変な誤解しないで下さい!ただご飯を作っているだけです!指導の御礼をしたいと云うと手料理が食べたいと云われたので其れから今も良く或るんです。』

「なンだよ、其れ……。勝手に勘違いしてただけかよ。」

『私達が付き合っている、とですか?』

「あァ。手前ェら会話が紛らわしいンだよ。で、こっからが本題だ。手前は俺のことが好きなのか?」

『すみません。諦めますから。任務に支障は無いようにしますから…』


愛理は顔を赤くしてそう云うと徐々に背後に下がって行った。
が、その先は壁であり等々背中がぶつかってしまう。
中也が其れを逃す筈は無く愛理の顔の横に肘を突くともう片方の手で顎を持ち上げる。


『えっ、ちゅっ、中也さん!?』

「うるせー、黙ってろ。」


愛理に軽い口付けをすると「此れでやっと俺のモンだな。」と云い部屋から出て行った。


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