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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第24章 不安定要素





真っ直ぐ私を射抜く黄金の瞳から目を逸らすなど到底成し得ない。



『独歩こそ向き合って如何したいの。困るのはそっちでしょ。』

国「こうして貴様を苦しめて困るのならば、落ちる所まで落ちて困る方がまだ佳い。」



国木田が掴んでいた手をグイッと引き寄せたことで愛理の身体はソファーに座っていた彼の元へと倒れ込んでしまう。



『ッ……!独歩、離して!』

国「無理だ。」



後頭部に手を回し愛理の色付きのいい唇へ口付けた。



国「此れでもう戻れんな。」



困惑している彼女を他所に不適な笑みを浮かべるとまた口付けをし、何度も何度も確かめるように繰り返す。



『ちょっ……独歩ッ…苦しい!』

国「嗚呼…………すまん。」



乱れた息を整えた愛理は国木田の首に腕を回しそのまま体重をかけた。



『好き。』

国「嗚呼。」

『好き。』



何度も好意を口にする愛理は甘えるようにグリグリと首筋に顔を埋める。
その仕草に自分は理想へ近付いたと思った。



彼女の為を思いずっと胸に秘めてきた。
何時も彼女の側にいる中原や太宰を見ては幾度となく羨んだ。
歳の差が無ければ。
教師じゃ無ければ。
生徒じゃ無ければ。
———————彼女を独り占め出来れば、と。



国「一つ約束が有る。」

『何?』

国「公私混同はするなよ。」

『うん、何時も通りね。』

国「……貴様のお母さんになる心算も無いが。」



はぁ、と重い溜息を落とした国木田は愛理の額にチュッと口付けをした。



国「好きだ。」

『————ッ!?不意打ちは卑怯!』

国「……そんな顔を見れるのならばもっと早くこうしていれば良かったな。」

『もう一寸遅かったら違う人のところに行ってたかもねー?』



此れ以上にないくらい目を見開いた国木田。
彼女が冗談だと種明かしをしたのは小一時間揶揄った後であった。






END




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