第24章 不安定要素
「机や小物類、あと飾り付けは如何しようか。」
「飾り付けは布でも貼っちゃえばー?」
「でも予算内で収まるか?」
成り行きを見守る愛理の横顔を盗み見る。
長い睫毛、ぱっちりとした目、肌は陶器のように澄み唇は艶やかだ。
容姿端麗とは正にこの事か。
性格は少々残念なところも或るが其処がまた佳い。
そう思うのは矢張り自分だけではないらしく、幼い頃から異性に呼び出されるのを何度も見てきた。
自身の心配とは裏腹に彼女が頷くことは一度も無かった。
前にモテモテだなァと茶化したが不特定多数から云い寄られても嬉しくは無いよ。と子供に似つかわしくない笑みと共に返された。
では誰から寄せられる好意ならば佳いのか、其れは俺じゃねェのか。などとはとてもじゃないが云えなかった。
『物思いに耽ってるねぇ。』
中「はァ!?」
気が付けば彼女もまた此方を見ていた。
『悪いけど私には答えられない。』
中「………なンでだよ。」
『もう決まったことだから。』
中「そうか。」
何故考えていることが分かった?
決まった、とは如何いう意味なのか。
尋ねたいことは沢山あったがどんな顔をすれば正解なのか分からずそっぽを向いた。
『ごめんね。力になってあげられなくて。でも中也は顔綺麗だからお嬢様似合うと思うよ?』
中「………。」
目を見開き彼女を見ればキョトンとして首を傾げる。
『あれ?嬉しくない?』
中「……たまに手前が青鯖以上に厄介だと思うぜ。」
『え、何それ!止めてよ!』
彼奴と同類にされたくないと喚く。
そしてすぐに、あ……。と何か思い出したような顔をした。
中「如何した?」
『太宰から今日一緒に帰ろうってメール来てたの忘れてた。』
中「チッ。なンで思い出したンだよ。無理だって送っとけ、ンなモン。」
『それがさぁ、此処一週間くらい断り続けてるんだよね。』
仕方ない、と呟いた辺り誘いに乗ることにしたのだろう。
中「俺も帰る。」
『うん。学校には泊まれないからね。』
中「違ェよ!そう云う意味じゃなくてだなァ…」
『三人で帰ろうか。』
机に伏せたまま此方を見て微笑む彼女はとても愛らしく思えた。