第24章 不安定要素
太「なーに黄昏てるの?」
幼馴染を見送り一人になったと思えば何処から湧いてきたのか。
『マイブームでして…。』
太「女子高校生にしては渋い趣味だね。」
ああ云えばこう云う、太宰は正に其れを具現化した様な男だ。
『渋い女子高校生はお嫌い?』
太「真逆。大好きだよ。云っただろう?私はどんな君でも好きだと。」
『………本っ当いい性格してる。』
太「性格がいいの間違いだろう?」
黙り込んだ私に此れ以上会話を続ける意思が無いと汲み取ったのか近くに居た足音は遠ざかっていく。
『はぁ。何やってんだろ。』
国「何やってるは此方の台詞だ。」
『うぇっ!?』
不意打ちのあまり可愛らしい声を出せなかった自分を恥じる。
国「もうすぐ下校の時間だ。」
『部活動は無いの?』
国「帰宅部は下校の時間だ、という意味だ!」
全く……揚げ足を取りよって。と物々云う国木田先生。
その姿は厳格な教師…と云うよりはまるでお母さんだ。
『ねぇ、お母さん。』
国「誰がお母さんだ!!」
『じゃあ、お父さん。』
国「…なんだ。」
『クラスの出し物決まった?』
国「お化け屋敷にするそうだ。」
『お父さんのクラスの事だから物凄く怖そう。』
二クラス離れた国木田が受け持つ生徒達の顔を思い浮かべる。
あまり他人に興味が無い為出てきた顔は数名だが矢張りえげつないものになりそうだ。
『ふふっ。』
国「笑うな。俺は此れから先の苦労が絶えん。」
『それだけ構って貰えるんでしょ?いいじゃん。』
頬を膨らましそっぽを向いた彼女の頭を少し乱暴に撫でる。
国「……俺は教師だ。」
『知ってる。』
国「これでも構っている心算だ。」
『知ってる。』
国「ならば……ッ!!」
『あはは。私がそんな小さい事気にしてる訳ないでしょ。ちゃんとお母さんの愛は伝わってるから安心して。』
じゃあねー。と鞄を手に教室を去った彼女の背中はこんなにも小さかっただろうか。