第23章 悪戯
『元はと云えば仕事をしない治さんが悪いんですよ。』
正論だ。
彼女の言葉に顔を真っ青にした太宰。
一方では国木田がとても清々しい顔をしていた。
敦「あの太宰さんを手懐けるなんて……。」
敦はただただ尊敬の眼差しを送る。
『では本日はこれでお暇します。ありがとうございました。』
太「待ってくれ!……送らせてもくれないのかい?」
今にも出て行きそうなところへ慌てて声をかけるも、
『そんな事よりも仕事をして頂きたいです。』
ばっさりと切られてしまった。
本日何度目かの肩を落としよっぽど心配なのか、とうに出て行った扉の方を見てソワソワとまでし出す。
国「……太宰、緊急案件だ。あの女性を家まで無事に送り届けろ。ただし!終わったら直ぐに帰って来い!いいな!?」
太宰の背中を思いっきり叩くと、くるりと背を向け自身の机に戻った。
そんな国木田を見て微笑んだ太宰は、喜んで。とだけ告げると急いで後を追いかけた。
息が切れるのも御構い無しに走るが姿は見えない。
探偵社から彼女の自宅は行くとなるとこの道を通るはずなのだが……。
最悪の場合が横切った太宰の背中を誰かが叩く。
『治さん?』
太「愛理ッ!!!」
思わず彼女を抱き締める。
太「良かった、すれ違わなくて。」
『ふふっ、追い掛けなくとも良かったのに。それに私達がすれ違ったことなんて一度も無いでしょう?』
口元に手を当て上品に笑う愛理はとても素敵だ。
そんな彼女と違える事など考えたくもない。
太「君は私を分かってくれているからね。」
『今回も突然“私を探してご覧。”なんてメェルを寄越すんですもの。真逆この時の為に一ヶ月前にわざと名刺を部屋に残して行くなんて思いませんでした。』