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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第23章 悪戯





敦「太宰さん…揶揄いましたね?」

太「そんな心算は無かったのだけれどねぇ。第一別れた、ともとることが出来た筈だ。」



わざとらしく両手を上げてみせる太宰に答えは明白だった。



『こんな純粋そうな方で遊ぶなんてあんまりです。』

太「美しい君を自慢したかったのだよ。」

『そんな言葉では騙されませんよ。』



如何やら本気で怒っているらしい彼女を抱き寄せようとしたが其れは失敗に終わる。
拒絶された事がとても堪えたのか床に手をつく太宰。



『ではごめんなさいをして下さい。』



優しくかけられた言葉を聞き即座に立ち上がった。
そして敦へ歩み寄る。



太「敦くん、すまなかった。」



これでいい?と云わんばかりにチラと彼女を見れば当人はその視線を敦へ流した。
敦の了承を得た後、彼女は両手を広げた。
其処に空かさず飛び付き子が親に甘えるかの如く擦り付く。



『私からも、ご迷惑をお掛けしてすみません。』

敦「いえ、これくらい何時もの事ですから…。」

『……何時も?』

敦「え?はい。」



天然とは恐ろしい。
途端に彼女の纏う雰囲気が変わったのを察した太宰はこっそりと扉に手を掛けたが時すでに遅し。
掴まれた腕により逃げ場を失くす。



国「書類の期限を守らない事は勿論、そもそも机に向かっている所など殆ど見はせん。偶に書いたかと思えばいい加減で訂正ばかりだ。その上仕事中にフラッと消えたかと思えばやれ自殺だ、やれ心中だ……。此奴が真面目に仕事をする事など無い!!」



日頃の鬱憤を晴らすようにキッパリと云い切った彼にうんうん、と敦は頷く。



『それはそれは……本当にご迷惑をお掛けしてすみません。治さん、如何云うことなの?』



まるで悪戯が見つかった子供とその母。



太「いやっ、此れはだねぇ……。」

『国木田さん、敦さん。私の連絡先です。扱いに困った時はすぐにご一報下さい。』

国「!!?本当ですか!?助かります!!」



腰を九十度に曲げて連絡先をしかと受け取った彼。
その様子を不服そうに見ているのは勿論太宰。



太「酷い………此れではあんまりだ。」



泣き真似をしている太宰に彼女はにっこりと微笑む。



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