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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第23章 悪戯





『……?其れは如何云った意味でしょうか。』

国「あの迷惑噴射器でしたらうちの……「なぁに?国木田君。私の陰口を叩くなんて酷いじゃあないか。」」

国/敦「太宰!?」「太宰さん!?」



渦中の人物が顔を出したことにより二人は安堵する。
が、気になるは依頼者と太宰の関係。



「もう、治さんったら!一週間も連絡がつかないなんて如何云う事ですか!?」



立ち上がった女性は頬を膨らまし怒ってみせた。



太「すまないね。以前入水をした時に一緒に川に流されてしまったようだ。」

『それならそうと連絡をくれれば佳いじゃないですか。』



心配したんですから、と今にも泣き出してしまいそうな彼女を太宰は抱き寄せた。
みな幸せな結末でこのまま締めくくられると誰しもが思っていただろう。



敦「………あの!!」

『如何かしましたか?』



少し潤んだ瞳でジッと彼を見る。
その顔ですら美しい、などと考えている場合ではなかった。



敦「太宰さんが見せてくれた写真の女性とこの方は一体どんな関係なんですか?」

太「嗚呼、此れのことかい?」



と、例の写真を差し出す。
見比べると矢張り瓜二つで或る。
横に居た国木田は訳が分からない、と云った様子だ。



国「小僧、何を云っている。本人だろうが。」

太「うん、そうだよ。」

敦「え…?」



戸惑いを隠せない敦は何度も写真と彼女を見比べる。



『あの写真まだ持っているんですか?』

太「勿論だよ。あんなに綺麗に写っている君を持ち歩かない訳にはいかないだろう?」

『本人が居るのに、ですか?』

太「何時も君を見ていたいのだよ。」



ちゅっ、彼は頬にキスをした。



敦「いやいやいや、待って下さいよ!太宰さん先刻亡くなったって話していたじゃないですか!」

太「え、私はそんなこと一言も云っていないよ?」



思い返す敦。
幸せだったね、と遠い目をした太宰を見て敦はもしかしてその方はもう亡くなっているのか?という意を尋ねた。
その後、伝えたいことはその時に伝えておくべきなのだよ。と彼は意味深に云ったのだ。



……が、太宰ははっきりと亡くなっていると告げてはいない。
自分が勝手に勘違いをした。
否、そうするように彼から誘導されたのだ。



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