第22章 痛いほどの愛
———————ゆさゆさと揺られる心地佳い感覚。
人の温もりに触れるなど何年振りだろうか。
……ん?人?
パチっと開けた私の目に飛び込んで来たのは黒い外套。
更に云えば此れは太宰幹部のもので或る。
おずおずと目線を上にやると矢張り横抱きしているのは太宰幹部で、幹部は前に視線を置いたまま口を開いた。
太「全く君は……。目覚めるタイミングまで悪い。」
『え?…………あ、お、降ります!すみま「じっとしてないと落とすよ。」』
『落としてもらって構いません。』
唖然とした顔の太宰幹部はそう来たか、と笑った。
初めて見た幹部の笑顔は普段の凛々しさや近寄り難さを感じない年相応のもの。
まじまじと見ていた私の視線に気付いたのか、何?と何時もの調子で尋ねた。
『いえ、太宰幹部の笑った顔を初めて見たもので。』
太「そうだろうね。君の前では笑えないもの。」
少し浮ついていた気持ちは一瞬にして底辺は叩き落とされる。
そして横抱きにされたまま医務室へ到着した。
まるで壊れ物を扱うかのようにそっと寝台は座らせられ、次に太宰幹部は包帯や消毒液などを取ると慣れた手つきでブラウスの釦を外し始めた。
『ちょっ、一寸待って下さい!!』
太「手当てするんだろう?」
『自分でしますから!』
太「ふぅん。私の手当てでは不十分だと云いたいの?其れに背中は如何やってする心算?」
ぐうの音も出なかった。
大人しくしていることが吉だと悟った私はせめてもの、と唇を噛み釦にかかる手から目を逸らす。
『ひゃっ…!』
いつのまに外し終えたのか、気付けば太宰幹部の綺麗な細い手が腹を這っていた。
太「…………。あまり反応しないでくれる?」
『すみません…。』