第22章 痛いほどの愛
………が、私の手は少年によって軽々と受け止められた。
少年「ふぅん。マフィアとは云え所詮は女の子の拳だね。痒くすらないや。」
ドンッと思いっ切り突き飛ばされそのまま背中が壁に当たる。
急いで体勢を立て直そうとするも内臓が悲鳴をあげて微動だに出来なかった。
少年「なぁに?真逆あれだけでへばっちゃったなんて云わないよねぇ。」
あどけない顔をしてやる事なす事容赦無い。
的確に私の傷口を狙って殴る蹴るを繰り返す。
『ぐはっ…!』
少年「それにしてもそんな怪我を負っても出撃するなんてよっぽど命知らずなんだね。」
『此れぐらいの怪我で休んでなんて居られないの。』
少年「…そうか。君の上司は酷い奴なんだね。良かったら僕のところへ来る?」
重い身体を無理やり動かし少年の脚を掛け転ばせると瞬時に上乗りになり刃物で肩と脚の腱を削いだ。
次に懐から出した銃を彼の額に向ける。
『さようなら。“お兄さん”。』
少年に扮した彼はフッと笑うと大人しく最期を受け入れた。
大方姿を変えられるか年齢を操れる異能力なのだろう。
今回は少年に姿を変え、私を油断させようとしたのだろうが醸し出す場数慣れした雰囲気や様子までは隠せなかったようだ。
よろよろとした足取りで壁伝いに進むが援護に回っていた構成員に次々と追い越されてしまう。
このままでは完全に足手纏いになる、と気合いを入れ身体に力を入れたところで後ろから腕をグイッと引かれた。
『何っ!?』
太「何は此方の台詞だ。そのまま行っても足手纏いになるだけだ。下がっていろ。」
『で、ですが…!』
太「私が下がっていろと云ったのが聞こえないのか?」
『……お役に立てず申し訳ありません。』
怒りを宿した太宰幹部の眼。
次に私が見たのは幹部の手入れが行き届いている靴だった。