第21章 侵食(彼目線)
俺が異能力者で或る事、ポートマフィアの一員で或る事、更には任務で数え切れない程沢山の人を殺したと告げた。
最初はうんうん。と相槌を打ってくれていたが途中から青褪めた表情に変わり話を聞くだけで精一杯、という様子だった。
矢張り表社会で生きる彼女には荷が重いのだろう。
中「俺が怖いか?」
『いえ……。』
中「そうか。………他に聞いておきてェ事とか或るか?」
『人を殺すって、どんな感覚ですか?』
前に向けていた視線を此方に向け、真っ直ぐに俺を見てそう云った。
覚悟を決めた俺は正直に答えることにした。
中「最初は怖いだとか生きる為には仕方ないだとかあれこれ自分に云い訳してたな。………だが今は何とも思わねェ。ポートマフィアが人を殺すぐらいで一々ビビっちゃ居られねェしな。其れが仕事だし俺は守りたい奴だけ守れれば佳い。」
『そう、ですか……。』
先程からの重苦しい雰囲気は増すばかり。
お互い無言のまま時計の針だけが進んでいく。
愛理の審判が下るのを待つ間落ち着かない俺はやたらと忙しない仕草を取る。
此処で愛理に拒否されたなら諦めるしかねェ。
地下牢にでも閉じ込めて一生俺無しじゃ生きられない身体にするのも佳いなァ。
なンて考えているともどかしい距離に或った温もりが俺を優しく包み込んだ。
中「なッ!!!?………手前ェ『私はその“守りたい奴”の中に入っていますか?』
ンなの当たり前だろ。」
無理すンな、と云おうとすればか細い彼女の声に掻き消された。
答えなンて決まりきっている問い掛けに当たり前だ、と告げれば首に回された腕の力が強まる。
反射的に愛理の背中に手を添えると顔を上げた彼女と見つめ合う形になり、そのまま二人の距離は零糎になった。
中「後悔しねェな?」
『はい。此れが私の答えです。』
中「……………そうか。」
触れるだけだった口づけを段々と深いものへ変えていけば惚けた顔をした彼女は酸素を取り込もうと口を開く。
其処は空かさず舌を入れて間もなくお互いの息は荒くなり自身の限界をも感じた。
中「愛理、寝台行くぞ。」
その言葉に頷いた愛理は正真正銘“俺のモノ”となった。