第21章 侵食(彼目線)
愛理と対面してから二週間。
仕事の合間を縫ってこまめに電話やメェルを入れる。
彼女は俺からの連絡を楽しみにしてくれているみたいだ。
だが彼女曰く最近写真も恋文も見てくれてはいないと云う。
折角募る想いを伝えているというのに。
まァ佳い。もうすぐ、もうすぐで俺のモンになるンだ。
太「なぁに、君。最近気持ち悪いんだけど。」
愛理の事で頭がいっぱいなのに不愉快な茶々を入れるのは前に座っている太宰。
中「あ?何がだよ。」
太「妙に機嫌佳いじゃない。」
中「……そうか?」
機嫌が佳い?そりゃアそうだろ。
愛しい愛理が俺だけを映してくれる時が近付いてるンだ。
面倒くせェと思いながらも彼奴の云う通り機嫌が佳い俺は話す為に顔を上げる。
太「真逆気付いてなかったとか云う心算?」
中「変わンねェだろ。」
太「少なくとも仕事に支障は出てるよ。」
中「雑だって云いてェのか?」
太「その逆だよ。君にしては丁寧過ぎるんだ。闘い方にしろ書類にしろね。」
中「けっ。じゃあ佳いだろ。」
無意識に浮かれていた事を青鯖に悟られ小っ恥ずかしく思った俺は時計を気にしつつ手元の書類に視線を落とす。
すると計ったかの様に衣嚢に入れていた携帯電話が震える。
太「おや?プライベェトの電話が鳴るなんて珍しいね。」
中「………なンで分かるンだよ。————————もしもし?……………愛理か。ん?………ッ!?すぐ行く!!待ってろ!!」
血相を変えて脇目も振らずに部屋を出て行こうとした中原の腕を掴み引き止めた。
中「何すンだよ!!」
太「其れは此方の台詞でしょ。仕事放ったらかして何処に行く心算?」
中「緊急事態なンだ、そんな事云ってられるか!分かったら手ェ離せ!」
そうだ、何よりも大事な愛理が俺に助けを求めてるンだ。
にしても怯えた声も唆る…。
嗚呼、今すぐ行くからな。待ってろよ?