第21章 侵食(彼目線)
『「いただきます。」』
誘導に誘導を重ねた俺は愛理の家で手料理を振る舞って貰っていた。
「愛理は料理上手だな!全部美味い!」
初めて食べた其の味は彼女の優しさや慈しみが現れていてお世辞抜きでとても美味かった。
『いえいえ。中原さんこそ上手です!其れにお洒落ですし…。』
「こんなの簡単だ。慣れりゃアすぐ出来る。」
急に顔を伏せてしまった彼女。
凡そストーカーの事だろう。
「大丈夫だ。俺が守ってやるから心配すンな。」
『………如何して見ず知らずの私にそんな事云えるんですか?本当に被害に遭ってるかなんて分からないんですよ!今日だって、こんな時に限って写真も手紙もポストに入ってないし。』
「手前は嘘付かねェ。見てりゃ分かる。」
『分かりませんよ、そんなの!』
予想外だったのは意外と強情だ、と云う事。
此れだけ云っても一人でどうにかすると頼ってはくれない。
このままでは愛理が手に入らなくなっちまう。
其れだけは避けたい。
「職業柄っつーか、分かンだよ。其れに何か放っとけねェ。だから俺を頼ってくれねェか?」
駄々っ子の様に泣いて縋りたい気持ちを抑え、何とか説得を試みる。
『本当に頼っても?』
「嗚呼。」
『ではお願いします。』
「おゥ!宜しくな!」
と、迷惑ではないかと心配しつつも漸く折れてくれた。
「それで今まで送られたもの取ってねェのか?」
『基本的にはすぐ捨てるんですけど、昨日のは有ると思います。一寸待ってて下さい!確か此処ら辺に…………あっ!あった!』
「げっ。こりゃア執念深そうだな。…………ん?待てよ?」
そして俺は相談に乗るフリをし、写真を手にして既に見知った愛理の部屋を彷徨く。
適当な処でこっそり衣嚢から盗聴器を取り出して彼女に見せた。
するとこんな物が仕掛けられていたとは到底知らない愛理はすっかり怯えていた。
『此れって…。』
「盗聴器、だな。部屋に入られた形跡とかあったか?」
『いえ……。』
「そうか。此の様子じゃ多分他にも有る。部屋探しても大丈夫か?」
『はい。』
「怖かったら此処に居ろ。俺が探してやる。」
『私のことですから……私も探します。』
「おゥ。その域だ!」