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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第20章 侵食




恐る恐る話してくれたのは、異能力者だと云う事。
そして彼がポートマフィアの一員だと云う思いもよらない事だった。


何度も私の様子を伺いながら異能力の内容やポートマフィアでやっている事を大まかに教えてくれた。
———————勿論人殺しだと云う事も。
突然そんな話を聞かされ私は硬直するしか他なかった。


中「俺が怖いか?」

『いえ……。』

中「そうか。………他に聞いておきてェ事とか或るか?」

『人を殺すって、どんな感覚ですか?』


中原さんは息を呑みこう答えた。


中「最初は怖いだとか生きる為には仕方ないだとかあれこれ自分に云い訳してたな。………だが今は何とも思わねェ。ポートマフィアが人を殺すぐらいで一々ビビっちゃ居られねェしな。其れが仕事だし俺は守りたい奴だけ守れれば佳い。」

『そう、ですか……。』


重苦しい雰囲気の中ただただ時間だけが過ぎていく。
横に座る何時も自信満々な彼は落ち着かないのかそわそわとしている。
その仕草が急に可愛らしく思えたと同時に愛おしく思った私は先程まで悩んでいたことが馬鹿らしくなっていた。


中「なッ!!!?………手前ェ『私はその“守りたい奴”の中に入っていますか?』

ンなの当たり前だろ。」


若干怒りを孕んだ声に安堵を覚え抱き締めた腕を強めた。
そっと背中に手を回してくれた彼を見ようと顔を上げると自然と見つめ合う形になり、互いが互いに引き寄せられるかのように口づけを交わす。


中「後悔しねェな?」

『はい。此れが私の答えです。』

中「……………そうか。」


優しい口づけが段々と余裕の無いものに変わっていく。
僅かに開いた隙間から酸素を取り込もうとすればすかさず舌を入れられ更に荒々しくなったところで急に唇が離れた。


中「愛理、寝台行くぞ。」





その言葉に頷いた私は正真正銘“彼のもの”となった。








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