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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第20章 侵食




「本っ当に気持ち悪いんだけど。」


何の脈絡も無くそう云い放つ太宰治は先程から握っていた万年筆を捨てるように置いた。


「だからいきなり何なンだよ!」


怒りを露わにし確認していた書類を乱暴に机に置いた彼は中原中也で或る。


太「前より更に機嫌佳いじゃない。」

中「あァ?欲しかったモンが手に入ったンだよ。」


太宰はへぇ………。と呟き顎の下で手を組むと意味深な笑みを浮かべた。


太「壊さなきゃ佳いけれど。」

中「壊す訳ねェだろ。大事にするって決めたンだよ。」

太「大事にし過ぎるのも如何かと思うよ。」

中「ンッとに手前ェは口の減らねェ野郎だな。」

太「見てよ、此れ。」

中「あァ?」

太「書類も減らない。」


がっくしと拍子抜けをした中原が怒鳴ったのは云うまでも無い。


「あ、あのぅ……。」


突然聴こえてきた声の方へ目をやれば黒服の構成員であった。


中「手前ェ叩敲ぐらいしろ!」

「すっ、すみません!!」

太「凡そ中也の騒音とも云える声の所為で掻き消されてしまったのだろう?」

「はい……。」


優しい声色の最年少幹部に胸を撫で下ろし黒服は正直に答えた。


中「そりゃアすまねェ。」

「いえ!とんでもないです!私のタイミングが悪かっただけです!」

太「うん、そうだ。急ぎの用でない限り取り込み中と分かればまた改めて来るべきだ。」

「…………。」


先程とは打って変わり淡々と話す太宰に圧倒され何も言葉が出なくなってしまった。


太「何?返事も出来ないの?」

「すみません!!また出直します!!」


逃げるように部屋から飛び出した構成員を気にも止めず太宰は中原へ問い掛ける。


太「君への報告でしょ、あれ。」

中「嗚呼。最近忙しいからな。」

太「其れももう終わりだろう。」

中「チッ。なンだよ、全てお見通しって訳か。」

太「私を誰だと思ってるの。」

中「陰湿男。」

太「君だけには云われたくないね。」

中「何とでも云え。」







END





〈作者より〉
中途半端!しっくり来ない!と思っている皆様。←いつもだよ。なんて言わないで(泣)
この話、実はこれで終わりじゃありません!
次に続きます。




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