第2章 夜警
-水曜日。
家に迎えに来る中也を私はソワソワしながら待っていた。
今は午前10時丁度約束の時間だ。
するとピンポーン、と計ったように鳴るチャイムに緊張しながら扉を開ける。
「よゥ。少し早かったか?」
『ううん、丁度だよ。』
ワインレッドのシャツに黒のパンツと白い革靴、それと何時もの帽子を合わせている彼を見て矢張りお洒落だなと実感する。
彼に誘導されて車の助手席に乗せられると車を発進させそういえば、と話し始める。
「インターホン確認しねェで出んな。危ないだろうが。」
『ふふっ、分かった。とてもマフィアの台詞とは思えないけど。』
「今は忘れろ。」
『そういえば付き合って欲しい場所って?』
「ん?嗚呼、着けば分かる。」
そう云って会話が途切れたものの緊張感など無く、むしろ居心地が良い此の空間を存分に味わった。
車を十分程走らせた所でと或る駐車場に止まり降りるように促される。
「行くぞ。」
たった一言だけ告げた中也は私の手を握り目的地へと歩き出す。
その際私の歩幅に合わせてくれる彼に手だけではなく心も惹かれていた。
『此処って…』
「嗚呼、服屋だ。スカート破いたから新しいの買わなきゃなんねェだろ?」
『中也、有難う。』
「おゥよ。」
戦闘で破けてしまったキュロットの事気にしていてくれたのだととても心が温かくなる。
御言葉に甘えて店内を見て回りながら中也にアドバイスを求めると嫌な顔一つせず真剣に答えてくれた。
更には俺が進めたもンだから、と下だけではなくトップスや小物まで選んでプレゼントしてくれる始末だ。
『何から何まで本当に有難う。でも良かったの?』
「俺が好きでしたことだ。もし悪いと思ってンなら次の逢瀬でその服着て来てくれ。」
自然に次の逢瀬を予約され動揺しながらも頷く。
『うっ、うん!分かった!』
「じゃあそろそろ飯にするか。近くに上手いパスタ屋があるんだが其処でいいか?」
『勿論!中也のオススメなら何処でも!』
上機嫌に笑う愛理を見て勇気を出して誘って良かったと心底思う中也であった。
此れから起こる悲劇も知らずに……。