第2章 夜警
時間はあっという間に進み夜になり色んな所に出掛けた二人は最後にBarに来ていた。
中也は何時ものようにワインを、愛理もまた同じものを飲んでいた。
「今日は連れ回して悪かったな。」
『ううん!凄く楽しかった!』
「そうか。そりゃア良かった。……一つ聞きてェんだがよ、愛理はあの青鯖野郎のことが好きなのか?」
『えっ!?……いや、好きだけど慕ってるって意味であってそういうのでは。』
「ええっー、そうなの!?私はてっきり相思相愛かと思っていたんだけど。」
「……は?」
突如聞こえてきた忌々しい声のする方を振り向くと其処には思った通りの人物が立っていた。
「手前ェ、何で此処に居る…。」
「やだなぁ中也。私が何処で飲もうと勝手だろう?それとも君は束縛するタイプなのかい?」
「そういうことを云ってるンじゃねェ!!」
太宰さんはわなわなと震えながら今にもグラスを割りそうな中也を宥めている私の隣にさも当然のように座る。
「何勝手に座ってやがる。」
「お酒を飲みに来たんだから座るのが当然だろう?それとも何?帽子置き場は座れないから矢張り立って飲むのかい?」
「云わせておけば好き勝手云いやがってこのタコ!!早く死んじまえっつーんだよ。」
『中也、落ち着いて。そんなこと云っても太宰さん喜ぶだけよ?』
「………待って。愛理ちゃん今何て?」
前回よりも中也に突っかかっている所を見ると珍しく機嫌が悪いのかなーと思っているとまたもや珍しく一瞬驚いた顔をした。
『えっと、太宰さんが喜ぶだけだよ。と。』
「違う違う!其処じゃなくて!」
『中也、落ち着いて?』
「そう其処だよ!何時から中也なんて汚い言葉を云うようになったんだい!?」
「死なす。……こいつ絶対いつか死なす。」
『えぇっと何時からだろう?』
「私ですら“治さん”と呼ばれていないのに不公平ではないか!まっ、真逆付き合ってるとか云わないよね!?」
『付き合ってませんけど?』
左隣は酔っているのか顔を少し赤くして眉間に皺を寄せている一方、右隣は軽くウェーブのかかった髪を揺らしながら慌てふためいている。
………なんて一人冷静にこの状況を把握した。