第2章 夜警
急に野球の話をし出した二人を放っておいて今の隙に、と思い自分の机に戻ると間もなく乱歩さんがやって来て隣の椅子に座る。
「君はさぁ、本当にいいの?如何なるか分かってるの?」
そうか、乱歩さんには全てお見通しなんだ。
デートの相手が中也であること。
あの日から連絡をまめに取り仲良くなっていること。
そして、私が中也を好きなことも。
そして、その彼がポートマフィアだと云うことも。
『えぇ。分かっています。もし、如何かなれば包み隠さず社長とはお話する心算です。』
「向こうに行くの?」
『いいえ。そんな事私には出来ません。まぁ許して頂けたらの話ですが…』
「ふぅん。……嘘は無いね。君が其処まで頑なになるなんて珍しいじゃないか。」
私が武装探偵社を抜ける心算が無い事が分かったのか、その場の雰囲気が一転し雑談へと変わったのが分かる。
『彼は無償の愛をくれるんです。』
「太宰もあげてるじゃないか。」
『太宰さんはきっと何か目論んでのことですから。』
苦笑いで応える愛理を見てこりゃ本当に伝わってないよ、太宰。と心の中で憐れむ。
「もし目論んで無かったら?」
『……。それでもきっと居心地の良い彼の隣を選ぶでしょう。』
そう。とだけ呟くと乱歩さんは元の自分の机に戻り何やら奇妙な色のお菓子を練り始めた。
それから私も明後日の水曜日の為に仕事を終わらせるべく集中する。