第17章 拾い者と落し者 其の壱
ガバッと私から身体を離すと私のブラウスの釦を次々に開けていった。
『ちょっ、中也さんっ!?』
中「なンだよ。此れ。」
頬を染めて顔を晒す敦君と芥川君とは違い、彼は胸元の紅く咲いた花を凝視する。
次に彼は何も言葉が出てこない私に舌打ちをすると今度は太宰さんを睨みつけた。
太「此れでわかっただろう?"今の”愛理ちゃんには私が必要なのだよ。」
敦「僕も、愛理さんには行って欲しくないです!うちにずっと居て下さいよ!!」
『敦君まで…』
芥「黙れ人虎。愛理さんは此方の人間。一度闇に染まった者は陽の目を浴びる事は無い。そうですよね?太宰さん。」
太「君も云う様になったじゃないか。けれど今の彼女がマフィアに戻れると思うのかい?一度陽の目を見れば其れに憧れ続けるのは至極当然の事だ。このまま連れて行けば彼女は一生苦しみ続けることになる。」
中「………。」
太宰の云う事は最もだと思っている中也は俯いてしまった。
先刻まで威勢の良かった彼は何処にも居ない。
其れを見た愛理は、江戸川さんが選んでおきなよ。と忠告してくれたのはこの事だったんだ。と漸く理解した。
中「……連れて帰っても此奴に殺しはさせねェ。」
太「直接手は下さなくて済む様に参謀や情報処理に回す心算かい?其れも一緒だろう。自分のさじ加減次第で敵味方問わず犠牲者が増えるのだからね。寧ろ其方の方が酷だよ。」
やっと思い付いた反論もいとも簡単に覆されてしまった。
そもそも頭脳戦で此奴に勝てた試しがない。
何か打つ術は……と中也が焦っているとトドメを刺される。
太「君達の所へ行っても彼女は幸せにはなれないよ。さぁ、おいで愛理ちゃん。探偵社へ帰ろう。」
彼女へ手を差し出しにっこりと笑ってみせる太宰。
それに吸い寄せられるかの如く自分の元を離れ、彼に近付いた愛理を見て敗北を確信した。