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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第17章 拾い者と落し者 其の壱




太「此処なら落ち着いて話が出来るかな。」

敦「あのぅ、何故僕まで……」

太「護衛、かな?」

敦「護衛?何のですか?」

太「乱歩さんが必要だと云うからね。」

敦「全くもって意味が分からないんですけど。」


嗚呼、とうとう中島さんが怒ってしまった…。
まぁ無理もないだろう。
あの後探偵社へと向かった私達は国木田さんの怒号を他所に敦君を引き連れてとある倉庫へと来たのだ。


太「用が或るからだよ。」

敦「だから何故倉庫に………ッ!!?」


急に倉庫の扉が勢いよく開き思わず私と敦君は身構える。
其処から現れたのは黒づくめの二人だった。


中「よぉ、邪魔するぜ。」

芥「お久しぶりです。太宰さん。………愛理。」


誰?この人達。
其れに如何して私の名前を知っているの?


太「邪魔するなら帰ってー。」

中「そうか。じゃあ帰るわ………ってなる訳ねェだろ!!古典的なギャグやらすな!!」

太「芥川君、今のは最近流行っている挨拶なのだよ。君も覚えると佳い。」

芥「分かりました。」

敦「いや、分かるなよ。如何考えても違うだろ。」

芥「黙れ。太宰さんの云う事を貴様は疑うのか。」

敦「あぁー、もういいや、うん。」

『……えっと、ところで御二方はどなたなんですか?』

中/芥「「ッ!?」」


私の言葉に驚きを隠せない御二人。
もしかして記憶喪失になる前に会った事があるのかも。
そう考えれば納得がいく。


中「愛理が記憶喪失になったっつーのは本当だったンだな……。」

芥「そのようですね。」

『すみません。半年程記憶が飛んでいまして……。」

中「本当に何も思い出せねェか?」

『………はい。』

中「そうか。」


私が何も思い出せない事を知ると凄く哀しそうな顔をする中原さん。
何故だかとても心が痛む。
考えるよりも先に身体が動いた私は気付けば中原さんに抱きついていた。


『ごめんなさい。そんな顔をさせたかったんじゃないんです。』

中「いや、しょうがねェ事だ。全部知りたいか?」


以前江戸川さんに同じ質問をされた時はすんなりと断ったのだが今回は何故だか断れない。
どんな手を使ってでも記憶を取り戻さなくてはいけない気がする。
私が返事をしようとしたその時—————別の声が其れを遮った。




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