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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第17章 拾い者と落し者 其の壱




すっかりマイペースに前を歩く江戸川さんの後ろをただただ着いて行く。
もうかれこれ二十分は路地裏を歩いているような……


『あの…』

江「あと二分。其処の駄菓子屋の糸引き飴が食べたい気分なんだ。」

『はぁ……』


まるで私の心の中を読んだかのように聞きたかった事を教えてくれた。
だがあくまで自分のペースを崩す気は無いみたいだ。
なんて考えていると彼が突然歩みを止め此方を振り向く。


江「君さぁ、もし記憶が戻ったとして元の居場所に帰るの?」

『帰れるのであれば屹度帰ると思います。』

江「ふーん。で?君の異能力は?」

『教えずとも御見通しなのでは?』

江「まぁね。……君の事教えて貰いたい?」

『………いえ。』


少し間を空けて答えた私の返事に口を尖らせる。
まるで小さい子みたいだ。


江「なんで?」

『人に教えて貰っても意味が無いでしょう?自分の記憶は自分で取り戻さなきゃ。其れに江戸川さんが嘘をつかないと云う保証が無いです。』


もしかしたら機嫌を損ねてしまうかも知れないと不安に思いながら自分の思った事を正直に告げる。
すると彼はにんまりとした顔で口を開いた。


江「気に入った。」

『は?』

江「だーかーらー、君の事気に入ったって云ってるの!記憶戻っても此処に居なよ。」

『其れは………』

江「まぁ僕が諦めたって太宰が離さないと思うけどね。」

『何故太宰さんが?』

江「太宰が一人に執着する事って無いんだよ。君も其れを受け入れつつあるでしょ?」

『えぇ……。』


薄々、どころか確実に気付いている。
私を愛してくれていることに。
人に好意を寄せられることはとても嬉しいし、更に相手は顔もスタイルも頭も良い太宰さん。
このまま彼と……と思う反面、一定の距離を保とうと何故か身構えてしまうのだ。
今の話の流れから察するに失くなった記憶と関係あるに違いない。


江「うん。正解。」

『ッ!?……心が読めるんですか、貴方は。』

江「僕はエスパーじゃないからね。推理してるだけ。今の内にどっちか選んでおきなよ。」


江戸川さんの云っている意味が分からず首を捻っていた私は自分に向けられた視線など気付く余地も無かった。











?「漸く見つけたぞ。戻って報告せねば。」



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