第17章 拾い者と落し者 其の壱
『あの、良ければ見つけた時の状況を教えて貰えませんか?何か思い出す手掛かりになるかも知れませんし。』
与「嗚呼、それが良い。」
国「事の始まりは探偵社に次々と同じ内容の依頼が来たことからだ。其の内容は“人がまるで神隠しに或ったかの様に消えている”と云うもので失踪した人に共通点は無く、姿を眩ます理由も無い。その上目撃者も居らず、防犯カメラにも映って居らん事から勿論警察はお手上げだ。」
『其処で探偵社に泣きつくしかない、と?』
国「嗚呼。うちには乱歩さんと云うどんな事件でも超推理で解決してしまう方が居てな、推理してもらったのだがどの案件も靄がかかったかの様に漠然としていると云っていた。」
『………。』
国「恐らく異能力の仕業で或ろうと話していると新しい被害者が出たので携帯のGPSを辿って行き着いた倉庫に貴様が一人で倒れていた、と云う訳だ。」
谷「因みに他には誰も居ませんでした。其れに不自然な程静かでした。」
国木田さんの話をジッと聞く私を太宰さんが見つめる。
恐らく私の事を疑っているのだろう。
本当に記憶を失くしているのか、事件に関わっているのではないのかと。
だけど残念乍ら先程から私は嘘を付いていない。
何も思い出せないのだ……。
『ごめん、なさい。何も分からないです……。』
国「いや、いいんだ。目覚めたばかりなのに悪かったな。」
宮「これが都会で流行りの記憶喪失ってやつですね!!」
敦「うん、別に流行っている訳ではないかな……。」
与「そういやアンタ名前は覚えていたけどどの程度の記憶は或るんだい?」
云われてみれば……。
記憶喪失にも色々種類があって、名前等自分の事を一切思い出せない人も居れば或る一定の事柄に関する記憶だけを思い出せない人も居ると聞いた事が或る。
私の場合恐らく後者だ。
『今まで生きてきた記憶ははっきりしています。でも此処半年の記憶が抜けているみたいです。』
太「みたい、と云うのは?」
『日付から推測しました。其れに半年前の記憶と倉庫で倒れていた時の状況にかなりの不一致があります。後はなんとなくですが、この半年間凄く楽しい日々を送っていた様な気がするんです。』
太「成る程ね…。」