第17章 拾い者と落し者 其の壱
—半年後。
『———以上です。』
森「そうか。本当に良くやってくれているね。中原君も優秀だと褒めていたよ。」
『首領を始めとする皆様に良くして頂いているお陰です。』
森「君みたいな子が来てくれて本当に良かったよ。」
『有難い御言葉です。では失礼します。』
あれから中也さんや紅葉姐さんに体術や世間の事を教わり素質が或ったらしい私は一気に幹部補佐まで登り詰めた。
勿論、中也さん専属の補佐である。
女が異例の半年で幹部補佐への出世、と云う事もあり以前はかなりのやっかみが或ったが其れは今では“恐怖”に変わっていると小耳に挟んだ。
理由は日頃クスリとも笑わない無表情な所と任務の際の血も涙も無い殺し方だと云う。
どうせすぐ死ぬんだから同情や躊躇は要らない。
『あっ、ごめんなさい。』
そんな事を考えていると同じく無表情な男とぶつかってしまった。
芥「否、此方こそ済まぬ。考え事をしていたが故。」
『へー。龍君が人に気付かないって珍しいね。其れ程の事?』
芥「嗚呼。やっと彼の人の居場所が分かったのだ。」
『“太宰治”ね。良かったじゃない。』
芥「案ずるには未だ早い。」
『まぁ協力出来る事が有れば教えて。手が空いてたら駆け付ける。』
芥「済まぬな。」
お互いがお互いに似ていると感じているからなのか、年齢や地位等御構い無しに敬語を使わず話す仲だ。
中也さん曰く私には心を開いてくれているらしい。
何でも彼は人を頼る事を知らないんだとか。
其れを頼るかもしれない、と云ってくれたのだから中也さんの云う通りなんだと思う。