第16章 交差
—次の日の朝。
「え?何事?」
『よォ。』
「如何して寮の前に中原先生が?壁にもたれて様になってるからみんな見てますよ?」
『荷物そンだけか?』
「え?私の話無視?……此れだけですけど。ってえぇっ!!?」
今の状況を全くもって理解してない愛理の荷物を持つと、空いている方の手で手を繋ぎ学校へと歩き始める。
「先生!!みんな見てますって!!ちょっと!?」
『ンなもン見せつけときゃあ良いだろ。俺と手前は正真正銘恋仲なンだ。それともそう思ってるのは俺だけか?」
「いや、違いませんけど……」
『だったら文句ねェだろ。』
「いや、或りますって!!仮にも教師と生徒ですし其れに……すぐ噂広まりますよ?」
『事実なンだ。別に構わねェよ。俺が何とかする。』
「何とかするって……」
『愛理は心配すンな。此れで嘘の噂が本当の噂に変わるな。』
あっ!と漸く意図を理解した彼女は礼を云い微笑むと繋いでいる手を強く握り返してくれた。
—職員室。
国「朝から専らの噂だ!如何する心算ですか!?中原先生!!」
『事実ですから如何する心算も或りません。』
紅「お主に彼女が出来たのは佳い事じゃがのぅ、世間の目は厳しいぞ?守り抜く覚悟は有るのかえ?」
『中途半端な気持ちで付き合ったりしません。俺は本気です。』
国「第一、保護者への説明は如何するんですか!!嗚呼、またクレームの電話が……「あ、それなら大丈夫〜。」ッ!!!?太宰!貴様か!!」
太「保護者の方も応援してくれるそうだよ〜。」
そう云って太宰が見せたのは某青い鳥のアプリ、ツッタカター。
其処には俺と愛理が手を繋いで笑い合い乍ら登校している写真と共に「朝から良いもの見ちゃった♡」と
呟いている画面。
下をスクロールすれば保護者や生徒からであろう、沢山の御祝いのメッセージが届いていた。
『太宰、如何云う事だ。』
太「良く撮れているだろう?」
『そう云う事云ってンじゃねェよ!!!見ろ!!国木田先生なンて泡吹いて倒れてるぞ!!』
太「おやっ、蟹みたいだねぇ。」