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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第16章 交差




此れ以上立原の時間を奪う訳にもいかず、礼を云うと

「大丈夫っスよ!寧ろ中原先生とくっついて貰わないと樋口が荒れてるんで。」
と苦笑いをしながら昼食へと向かって行った。










其の日の夜、俺は太宰を誘い居酒屋に来ていた。


「ふふっ、珍しい事も或るものだね。君の方から誘ってくるなんて。———で?彼の何が聞きたいの?」

『ハッ。全部御見通しって訳かよ。』

「君程分かりやすい人は居ないよ。蛞蝓の方がよっぽど読めないね。」

『手前ェなァ………。』

「最近一緒に居ると云うのは本当だよ。校内でも話しているところを見るし放課後もショッピングやカフェなんかに行ってデエトをしているみたい。」

『間違いねェンだな?』

「勿論。私の情報網を舐めてもらっちゃあ困るよ。あと自宅にも行く仲みたいだよ。」

『………は?』

「寮は異性の訪問禁止だから愛理ちゃんの処に行く事は無いけれど其の点彼は違う。だから愛理ちゃんから訪ねているみたいだね。」

『なンだよ、其れ。』


太宰の言葉にろくな返しも出来ずただ呆然とする。
デエトに行くぐらいなら友達の延長線とかまだ可能性は或ったが真逆芥川の家に自ら向かっているとは…。
此れは如何考えても決定的だ。


「で、如何する心算だい?」

『如何するもこうするも諦めるしかねェだろ。』

「何で?奪えば良いじゃない。」

『奪うって………手前なァ。』

「所詮子供同士の恋愛でしょ?結果はすぐに分かるよ。」

『幾ら俺らから見たら子供っつったって本当になる事だってあンだろ。現に高校から恋仲で結婚してる奴も居る。』

「はぁ………。とりあえず明日でしょ?会うの。ちゃんと話しておいでよ。」

『嗚呼、出来ればな。…………つか何で会う日知ってンだよ!!』

「云っただろう?私の情報網を舐めてもらっちゃあ困ると。」


もしかすると彼女より青鯖の方に頭を抱えるべきなのかも知れないと思った瞬間だった。


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