第16章 交差
却説、しっかりと落ち(弱め)がついた処で話を進めるとだな。
入学式の日を境に最低でも三日に一度は放課後にあの喫煙所で話す事が日課になっていた。
お互い約束した訳でも無いが俺は其れが楽しみで仕方無かった。
……太宰にバレて事或るごとに揶揄われるのは癪だが。
「先生ー!そろそろ授業終わりっスよ!」
『ん?……嗚呼、立原か。で、如何かしたか?』
「だからもう授業終わりですよって!」
『は?もうそんな時間か!?よしっ、じゃあ号令!』
体育委員で或る立原が号令をかけ挨拶を終えると皆それぞれ仲の良い子と教室へ戻って行く。
其の流れに逆らう様に立原が此方へ来ているのが視界に入る。
「先生本当如何したんですか?」
『何がだよ。』
「なんかボーッとしてるっつーか、心此処に在らずって感じで…。話ぐらいなら聞きますよ?」
『手前みてェな餓鬼に話す様な事じゃねェーよ。』
心配掛けたな、と笑って立ち去ろうとしたが立原の一言で其れは辞めざるを得なくなった。
「もしかして愛理と何か有ったんスか?」
『………何で其処で宮野が出て来ンだよ。』
「偶々見たんです。放課後二人で良い雰囲気で話してるところ。其れで最近愛理の噂が流れてるからもしかして、と思ったんスけど…。」
『噂?』
「二年の芥川先輩と恋仲なんじゃないかって。何でも最近一緒に居る事が多いし、腕を組んで放課後デエトしてたのを見たって云う人も居ますよ。」
『芥川………。嗚呼、彼奴か。』
何だかんだ云ってめっちゃ気にしてるじゃないですか、と呟く立原を無視しそう云えばと心辺りが或る事に気付く。
前は二日に一度来たり連日来たりした日が或ったが今は必ず三日に一度になっている。
其れに前に比べて恋愛関係の話題が多かった様な。
—料理あまり得意じゃないんですけど女子力無いですよね。
—男の人は髪長い方が好きですか?
極めつけは此れだ。
—如何やったら好きな人に振り向いてもらえますかね?……え?嗚呼、いやっ、友達の話ですよ!?
今思えばあれは友達の話なんかじゃねェ。
糞ッ、なンでそんな事にも気付かなかったンだ…。
俺は知らねェ間に芥川と進展させる為の相談に乗ってたって事かよ。