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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第16章 交差




私って結構欲張りなんです。と云って苦笑いを浮かべた彼女の頭をぽんぽんと叩いた。


『少なくとも俺は宮野がこうやって話しかけてくれて嬉しいけどな。』

「〜〜〜ッ///……待ってた甲斐あった。」ボソッ

『ン?何か云ったか?』

「いえっ!何でも!」


少女漫画特有の都合が悪い時は耳が遠くなる現象が起きて良かった。とホッとした愛理であった。


『じゃあそろそろ戻る。宮野も気を付けて帰れよ?』

「はい、お仕事頑張って下さいね!さようなら。」

『ありがとな。』


とても名残惜しかったが本当に仕事が山のように有る。
其れに未成年の子にあんまり副流煙を吸わせる訳にもいかねェ。
俺もブームに乗って禁煙でもしてみっかな……。








「如何したの?」

『はァ?何がだよ。』


職員室に戻り俺が自分の席に着くと同時に太宰は尋ねてきた。


「君の事だから………良い帽子をネットで買ったとか?」

『はァ?だから何なンだよ、先刻から!!』

「何時もより戻ってくる時間が早いだろう?私に仕事を押し付けられると理解しているのに一服が短時間で済む筈が無い。かと云って早く仕事を終わらせる為に急いで来た様にも見えない。それに元々小さい歩幅の君の足取りが軽いからね。」

『云いたい事は色々或るが先ず此れだけは云わせろ。歩幅と足取りの軽さは関係ねェ!!!』


思わず怒鳴ってしまい周りの職員からまた此奴らかと呆れた視線と共に国木田先生の怒号を頂く。


「其れで?」

『別に何もねェよ。』

「へぇー。」


未だ疑っている野郎を無視する事に決め込むと、彼奴も諦めたのか何も云わなくなった。
此処で正直に話せば途轍もなく面倒な事になるのは目に見えている。
隠し通す、そう決めて彼奴の顔を横目で見た。
否、正しくは見ようとしたが其れは叶わず、いつの間に置いたのか隣の机にあった筈の書類が自分の机に置いてあった。


『あンの野郎ォ〜〜〜!!!』

国「中原先生……。気持ちは分かりますがお静かに。」



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