第5章 嫌になるぐらいに君が好き
「亮ちゃん…?」
人通りのない静かな廊下に
俺の名前を呼ぶ大倉の声が
聞き慣れたはずの声が
知らない人の声に聞こえるんは
何でなんやろな…?
「あかねからあの日何があったか
ちゃんと聞いた…」
「大倉…あかねじゃなく俺が…」
「亮ちゃん…
謝罪とか言い訳とかやったら
いらんよ?」
「……」
「間違いは
誰にでもあるもんやん?
やから俺はあかねを許すし
亮ちゃんのことも許す…
でもその代わり亮ちゃんも
もうあかねに近付かんといて?
1度の間違いは許すけど
2度目は許さへんよ…?」
そう言って
優しく俺に笑いかける大倉の目の奥は
ひどく悲しそうで
ひどく苦しそうで
憎しみに満ちていて
こんな風に
笑う大倉を俺は知らへん…
今俺の目の前におって
俺に笑いかけてるこいつは
いったい誰なんやろう…?