第5章 嫌になるぐらいに君が好き
楽屋の扉の前
入るのを躊躇って
中々足を踏み出せずにいると
「何してんの…亮笑?」
なんて俺の後から来た
章ちゃんが声をかけてきて
「何でもないわ笑?」
そう言って
仕方なく楽屋の扉を開けた瞬間…
「ほんまか…大倉?」
なんてテンション高く叫ぶ
村上くんの声が聞こえくる…
大倉のとなりに座る村上くんに
「どうしたん…笑?」
そう笑顔で章ちゃんが
声をかけると
「大倉に彼女おるんは知ってるやろ?
なんかこいつ
彼女と一緒に住むことにしたらしいぞ笑?」
そう言って豪快に笑う村上くんの声が
聞こえてくる…
…えっと……?
村上くんは…
今何て言うたんやろ?
確かにあの日
あかねは俺を好きやって言うて
間違いなくこの手で
あかねを抱きしめたはずやのに…?
あれは全部
俺の願望で妄想やったんか…?
訳が分からず立ち尽くしたまま
カタカタと震える手を
必死に抑えながら
あかねに電話をかけようと
ポケットに手を突っ込んだ瞬間
「亮ちゃん…
ちょっと外で話せる?」
そう静かに言って
まっすぐに俺を見つめて
笑いかける大倉の視線に気づいて
なぜだか体はぞくりと寒気を感じた…