第4章 無くした心の取り戻し方
食事が終わり店を出る頃には
一人じゃ歩けないほどに
大倉さんは酔っぱらっていて
仕方なく亮ちゃんと二人
大倉さんをマンションまで
送りとどけた帰り道…
「じゃあね……」
そう言って
歩き出した私の後ろを
亮ちゃんは何も言わず
ただ静かに着いてくる…
私が歩くと一緒に歩き
私が立ち止まると一緒に立ち止まる
亮ちゃんに
「何で着いてくるの…?」
そう足を止め下を向いて
ぶっきらぼうに問いかけると
「もう夜遅いから…
一人で帰すんは心配やんか…
それに…
ちょっとお互い気まずくはなったけど
あかねと俺他人になったわけ
ちゃうやろ…(笑)?」
そう言って亮ちゃんは
私の隣で立ち止まると
にんまりと笑う……
どうして亮ちゃんはそんな風に
前と変わらない笑顔で私に
笑いかけられるんだろう…?
私は…
その笑顔を見るだけで
名前を呼ばれるだけで
胸がぎゅっと
痛いほどに締め付けられるのに…
じんじんとまた懲りもせず
熱を帯び始めたまぶたに
慌てて背中を向け
「もう…私のことなんてほっといてよ…?
私に構わないで…」
そう呟いて
溢れてきた涙を拭ってる背中に
投げ掛けられた
「ほっといて欲しいなら…
あの時も…今も…
何でお前は
そんな風に俺の前で
辛そうに泣くねん…?」
そんな亮ちゃんの言葉に…
ゆっくりと私から離れていく
足音に…
あの日から
必死に抑え込んで
見て見ぬふりをしてきた
訳の解らないぐちゃぐちゃした感情が
一気に溢れだして
気が付くと私は走りだし
亮ちゃんの背中に
しがみついていた…