第2章 意地悪なバレンタイン
あかねの話を聞いたあとも
黙ったまま何も言えない俺に
「ねぇ…どういう意味だと思う…?」
答えを求めて
あかねは顔を近付ける…
まっすぐすぎるあかねの視線から
逃げるように
「今は見るな…」
そう言って
あかねの目を手で覆うと
「何で見ちゃだめなの…?」
なんて訳がわからないのか
不思議そうに首をかしげる…
今の俺は
汚い感情に身体中を支配されてて
きっとひどい顔をしてる
そう解ってるから
「お前にだけは…
見られたくないねん…」
そう言って
あかねの目から手をどけ
ソファーにもたれかかり
自分の顔を腕で隠す…
「亮ちゃん…?」
そう名前を呼んで
顔を隠す腕にあかねの手が触れても
返事もせず黙っていると…
「じゃあ…今日はもう帰るね…?
なんか突然押し掛けときて
自分のことばっかり話してごめんね…?」
なんて…
遠慮気味なあかねの声がして
部屋の扉がパタンと音を立てて
閉まる音に…
あかねがさっきまで
座っていた場所に手を伸ばすと
かさりと音を立て
指に何かがぶつかった…