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マーメイド・ストーリー

第1章 序章-海底王国より-


陸地を眺めるのが好きだった私は、半年くらい前から、一人の青年を度々見かけるようになった。浜辺に一人で来ては、ぼぅっとしてるのか考え事をしているのか、しばらく海を見つめては帰っていく。たぶん年は近く、少し私より上かな?



一ヶ月ほど前、その青年が船に乗って、どこか別の陸地から戻ってくるところを私は見つけた。その日は嵐で、波も荒れに荒れていた。海に潜りっぱなしの人魚には、あまり関係ないけど。

けれど尾のない人間には、船を使うしかない人間には、嵐というのは大敵なものらしい。

かなり大きな波に打たれた船、その振動で落ちるあの人。
ここで見殺しにするわけにもいかず、私は青年を助ける。




いつもの浜辺まで彼を引っ張っていく。海水を飲んでいるかもしれない。胸のあたりを押して、吐き出させる。



彼は咳き込み海水を吐き出すと、意識をちゃんと取り戻した。


「大丈夫?」

「あぁ…俺は…一体何が…」

「船から落ちたのよ、でももう大丈夫。あなたじゃ体は冷えてしまうでしょうから、はやく家に戻ってね。それじゃあね」

「ちょっと待ってくれ…っ」



彼が起き上がる前に、私は急いで海に帰る。とにかく、あの人が無事でよかった。

もうすぐ陸への修行が始まる。また会えるといいな…覚えててくれるかな。
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