第1章 序章-海底王国より-
修行開始の早朝。
修行に行く国の朝日がギリギリまだ登らない時間。
浜辺に近い浅瀬に、私と国王である父だけだ。
「行ってまいります、お父様」
「うん、精進せよ。浜辺に上がると、お前の教育係が待ってるから、きちんということを聞くのだぞ」
「わかりました。…では、おねがいします」
「…がんばるのだぞ」
そう言い終わると父は鉾をふると、私の尾は泡と光につつまれ、人間の足になる。自力で陸を目指し50mほど泳ぎ、浜を見るとそこには私の教育係マルクが立っていた。
とても久しぶりに会ったけど、マルクが人間の姿をしていると不思議な気分。
もちろんマルクは人間の姿をしている。私を含む王族や貴族地位の子供が、陸地に上がって修行するのをサポートをするために、5年前から陸に上がった。
「あ、マルク久しぶr」
「ワー!!やめてくれマリカ姫、立たないでくれ、裸なんだから!!」
「あっ、そうか今の私、人間なんだった…」
「俺が目を閉じている間に立って、まずこのコートケープを羽織ってくれ」
そう言ってマルクは目を閉じ、コートケープを広げて待っている。私はそれをはおり、前のリボンを閉じる。これでひとまず体は太ももあたりまで覆われた。
次にマルクは、目を閉じたままスカートを私に手渡してくる。履けということだろう、足を上げてスカートを履く。足を地につけると激痛が走り、私はよろける。
「イーーーーったぁっっ」
「大丈夫か?!最初はみんなそうなんだ、足ができたばかりで慣れてないんだ…傷が出来たわけじゃなし、一ヶ月くらいすると痛みは完全に無くなるよ」
「一ヶ月も…?こんなに痛いの?」
「だから最初の一ヶ月は、家の中で勉強なんだ。
さっ、ブーツをはいて家に行くよ。痛みは俺の力ではどうすることもできないから、我慢してくれ」
「頑張る…」
靴を履き、地に足を下ろすたびに痛みを感じる。骨を無茶な方向へ曲げたら、こういう痛みになるかもしれない、という感じ。
ほんとに傷も血もないのだから、不思議だわ…