第1章 序章-海底王国より-
海底…とはいいつつ、日差しが差し込む暖かな珊瑚の海。岩や珊瑚からできた城に、海の王と妃、二人の王女が住んでいる。ここは人魚が支配する海底王国、アトランティコ。
海底王国も人魚も、陸に住む人間には伝説でしか知られていない。なぜ人間と交流がないのか私が尋ねると、「知られると危険だから」という。
王である私のお父様は教えてくれないけれど、きっとほかに何か理由があるんじゃないかと、私は思う。
アトランティコの昔からの習わしで、若者は成人の儀式のために一年間ほど陸に住み、修行に出なくてはならない。
この世界に住むのは、人魚だけではない。人間がどんな生活を送っているのか、見識を広げるため修行へいくのだそうだ。
人魚の尾を人間の足にするのは、王であるお父様。代々王に受け継がれる、魔法の矛で尾を足に変える。
私はマリカ・テティス。もうすぐ成人の儀のために、陸にあがり修行をしに行く、アトランティコ第一王女。不安と緊張、そして未知なる世界への期待で、私は寝付けずにいた。