第19章 佐賀美 陣 / 先生と教え子 ★
そうは言うが、コイツがプロデュース科の仕事に手を抜かないのは知っている。
物覚えも良いし、真面目に一生懸命取り組んでいるその姿は、アイドルからも教師陣からも、仕事に関わった相手先からも評判はとても良かった。
「んで? 次はどこのユニットのプロデュースなんだ?」
「あっ、先生私に興味あります?? 先生ならお触り大歓迎ですからね♡」
「はいはい、さ、帰った帰った…」
「あぁぁぁ待って先生、ちゃんと真面目に答えるから~!!」
そして、詳細を聞いていく。
どうやら次に担当するユニットは、最近出来たばかりの俺も聞いたことがあるような、無いようなユニットで。
これからユニット活動を始めるにあたって、何をすれば良いのか、何がしたいのかまだハッキリとしておらず、中々に難儀しそうなユニットだった。
「お前もまた変に難しいトコ回されたもんだなぁ」
「でしょー!! でも、私が頑張れば花が咲くかもしれないって思うと、やりがいはあるかな~。アレコレ考えるのも、嫌いじゃないしね♪」
そう言って笑うアイツに、手が伸びた。
頭をわしゃわしゃっと撫でると、「わわっ!?」っと驚いた仕草を見せる。
「頑張んなさいよ。ま、何かあったら話くらい聞いてやっから。あんま無理すんなよ~」
「えへへ…うん!!!」
そう言って、パッと無邪気に笑ったと思ったら、おもむろに起ちあがって。
私頑張るからね!!と宣言したのち、走って保健室を出て行った。
「…若いねぇ……。」
その若さを眩しいと感じながら、俺は煙草に火を付けた。
--------------------------------------------------------
あれから何日が過ぎただろうか。
ほぼ毎日保健室に来ていたアイツが、全然来なくなった。
まぁ学校には来ているみたいだし?
別にいいんですけどね。静かになってむしろ好都合だし??
なのに、何だろうな。この静かさが、落ち着かないなんて。
なんて。思っていたところだった。
勢いよく保健室の扉が開かれ、パッと視線を移すと。
飛び込んで来たのはアイツじゃなくて。
代わりに
「先生!! 大変です!! 月尾さんが倒れて!!!」
俺は久し振りに、息が切れるまで走った。