第18章 乙狩 アドニス / 七夕
「すまない、浴衣だと歩き辛いだろう。気が回らなくて…本当にすまない」
「う、ううん、そんな事ないよ、助けてくれてありがとう」
「いや…。その。その浴衣、とても似合っている。最初に見た時、あまりに綺麗で、言葉を失ってしまった」
「ふぇっ!?///」
そ、そんな事をサラッとぉぉぉぉぉ///
本当に、アドニスくんはそういう所ある。
こ、こっちの気も知らないで…///
「…聖子?」
「え、えっと…、あ、ありがとう…///」
「…あぁ。そうだ、お腹は減っていないか? 聖子は小さいからな。たくさん肉を食え」
「ふふっ。じゃあ焼き鳥にしようかな」
「焼き鳥はあっちだな。…行こう」
そう言って、自然に手を差し出してくれるアドニスくん。
王子様だ…。本当に絵本の中に出て来る王子様みたい。
私はドキドキしながら、その手に自分の手を重ねた。
それから、焼き鳥を二人で食べたり。
射的でアドニスくんが可愛いぬいぐるみを取ってくれたり。
(真剣な眼差しで銃を構えるアドニスくん本当にカッコよかった)
綿菓子を不思議そうに眺めて、驚きながら食べるアドニスくんを眺めたり。
(本当に可愛いなぁもう)
そのうち、小高い場所にある、大きな笹のところまで辿り着いた。
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「…立派な笹だな」
その笹には、既に色とりどりの短冊が付けられていた。
風に揺れるその様は、とても美しい。
「このイベントのメインの一つだからね♪」
誇らしげにそう話す彼女の姿が、格好良かった。
きっと、プロデューサーとして。たくさん考えて、あちこち奔走して、作り上げたのだろう。
短冊を書くスペースにたくさんの人がいて。
楽しそうに書いている姿を見つめる聖子の顔が
どんな星よりも輝いて見えた。
「折角だし、私たちも短冊を書いていこう?」
そう言って、手際よく短冊とペンを入手して来た彼女。
俺に1セット渡した後、楽しそうに何かをサラサラと書き出した。
何を書いているのか、凄く、気になる。
俺は、何を書こうか。
俺は………。