第18章 乙狩 アドニス / 七夕
「神崎」
「蓮巳殿、もう良いのだろうか?」
「あぁ。そろそろだろう」
神崎と蓮巳先輩が何やら話をしている。
仕事の話だろうか?
「神崎、俺はお邪魔だっただろうか」
「そんな事は無い、むしろ、アドニス殿にお願いがあるのだ」
「俺に、お願い…?」
何をお願いされるのか見当も付かず頭を傾げていると。
奥から、浴衣姿の聖子が鬼龍先輩と共に歩いて来た。
「アドニス殿、らいぶ開始までまだ時間がある。出店も出ているから、その辺りを聖子殿を案内してあげて欲しいのだ」
俺は、驚きのあまり、暫く声が出なかった。
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「わぁ…凄いね、出店がいっぱいだよ…!!」
「あぁ。そうだな」
俺は、聖子と一緒に出店が出ているエリアまで来ていた。
これは…夢、だろうか。
いや。違う。
神崎には、自分の思いを全て話していた。
俺が、聖子のことを、どう思っているか。
俺が不甲斐ないばかりに、神崎が気を回してくれたのだろう。
俺も…勇気を出さなくては……。
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あぁぁぁぁぁぁ。どうしよう。
これって、まるでデート、みたい…。
あの時、鬼龍先輩に呼ばれて。
ライブ開始まで時間もあるし、特に仕事も無いから、アドニスくんと七夕イベントを楽しんで来いって言われて。
鬼龍先輩が作ってくれていた浴衣を渡されて。
ついでにお着付けまでしてくれて。
どうしよう。夢、みたい…。
なんて考えていると。
「わっ!?」
何かに躓いてしまった。
「大丈夫か?」
すぐに、アドニスくんが支えてくれて。
ドキッと心臓が跳ねる。