第16章 椎名 ニキ / 美味しそうな人 ★
4年経った今でも、母のニキくん試食頼りは続いており…
ニキくんを見つけるや否や、ああやって軽く拉致していくのであった…。
「おーおー、相変わらず愛されてんねぇ♪」
「…ありがとうね、燐音くん」
「あん? どったよイキナリ」
「ニキくんから誕生日ケーキの依頼が来る度に思ってるよ、ニキくんに、お友達を、仲間を作ってくれて、ありがとう」
「……なぁオネーサン、ニキなんかやめて俺っちに乗り換えねぇ??」
「やめ…? 乗り換え…??」
「ちょ、ちょっと何言ってんすか燐音くん!! っていうか手ぇ握んのやめてセクハラっすよ!!!」
こうやってニキくんや燐音くんと他愛ない事で笑い合えるのが
とても心地よくて。
私の大好きな時間でした。
-後日-
今日はお店の定休日なので、お買い物を楽しんだ帰り道。
家の付近でふと、彼の姿が見えた。
「あ、ニキく…ん…?」
彼の足取りはふらついており、とても嫌な予感がした。
もしかして、空腹で限界が近いのではないか…
私は急いで彼の元へ走った。
「ニキくん!? 大丈夫!?」
「あ…姐、さん…?」
力なく振り返った彼は顔色が悪く、そしてお腹が鳴っているのがハッキリと聞こえた。
「ニキくん、私の家に来て? 何か作ってあげるからもう少し頑張ってね!!」
ニキくんの身体を支えながら、家路を急いだ。
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頭がボーッとするっす…。
こんな時に限って財布…燐音くんが持ってるし……。
燐音くんの馬鹿…。
姐さん…また迷惑掛けちゃったっすね…。
後でお礼しなきゃ…
あ…姐さんの匂い…こんなに近くに…
美味しそう…
…ダメっす、何考えてるんすか僕は。
”食べたい”、なんて…
人を”食べちゃダメ”っす、当然っす。
でも……
「ニキくん、ここ座って?」
姐さんのお部屋
部屋中に姐さんのいい匂いが広がってて
何故か空腹が加速した
「姐、さん……」
「ん? 」
美味しそう
ダメだ
美味しそう
だめ…
美味しそう
美味しそう……